Dolaの観劇・鑑賞日記

演劇やアートに心ときめく日々の記録です

コンサート「Japan Musical Festival 2022」

2022年.01.28/ LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

中川晃教さんを中心とするミュージカルコンサート。

東啓介さんと加藤和樹さんの『闇が広がる』は、どちらも声がよく出ていてよかった!

2人のデュエットをステージで聞いたのは≪スカーレット・ピンパーネル≫以来。細やかな表現の和樹さんと、声量豊かな啓介さんの組み合わせは絶品ですね✨

 

2.5次元ミュージカルから≪憂国のモリアーティ≫も参加。平野良さんがシャーロックになりきって素晴らしい役者歌を聴かせてくれました。モリミュは初回から全部見ているのですが、コンサートでは初めて。

良さんのシャーロックは、モリミュでも少し拗ねた感じで、でもとてもピュアな情熱があって魅力的でした。鈴木勝吾さんも持ち前の高音を響かせ、モリミュファンとしてはちょっと得意に😊

2.5次元の2人はミュージカル界といっても新しい分野の人たちなので、中川晃教さんが気配りされ、あたたかい会場の雰囲気をつくってくださっていました。

中川さんのお人柄だなあ~とそちらの方も愉しい思いでした。おつかれさまでした。

 

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小池一子展 ~生活の中のアートが素敵

オルタナティブ ! 小池一子展 アートとデザインのやわらかな運動」へ。

2022.01.アーツ千代田

1960年代からパルコの広告や無印良品の立ち上げなど、日本のデザイン界を牽引してきた小池一子さんの展覧会。

生活の中で生きるアートの試みが、とてもかっこいい!!

alternative-kazukokoike.3331.jp

ミケル・バルセロ展へ

2022.01.13  オペラシティアートギャラリー

ミケル・バルセロの作は初めてでした。

"スペイン現代美術界の巨匠”といわれるそうですが、絵画、彫刻、陶芸とどれもエネルギッシュで自由!

絵画の黄色い色彩はスペインの光なのかな。

闘牛の生と死のドラマが濃厚な輝きを放っていました。

 

『柳宗悦没後60年記念展ー民藝の100年』の感想

柳宗悦らが追求した“生活用品の持つ美しさ”に圧倒されます。
民藝とは「民衆のための工芸」という意味で、柳宗悦が牽引した民芸運動は、一般の人々が暮らしの中で磨いてきた美意識の再発見といえるでしょう。
 
今回は100年というだけあって、陶磁器・染織・木工・蓑・ざるといった道具類や、写真・映像などの資料が揃い総点数450点も!!
全国の民藝を一望できる貴重な機会でした。駒場日本民藝館の内装や光の中で観るのとは少し違いましたが、まずは精力的な取材に頭が下がります。
そして、展示されたモノたちの向こうに、日々の営みがあったということですね。
たとえば、夜なべ仕事で蓑をつくり、それだけでも機能は果たせるのに、「おしゃれな模様を付けたらいいなあ~」と考えたのでしょう。
そういう気持ちはとても豊かですし、もっと言えば「人間ってたいしたものだ」と惹きつけられてしまいます✨

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柳の書斎の再現は撮影可でした。民芸運動に関わった人たちはみんなお洒落で、スーツをばしっとキメて全国を回っていたようです。
ただ、それは動く広告のような意図で、新しい文化を身をもって伝えるためだったとか。

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会場では陶器などを販売していたのですが、今回は缶入りの飴のみ。

グッズの缶に描かれた山形県の羽広(はびろ)鉄瓶の曲線が素晴らしい!!

道具は使ってみて教えられることが多いので、手の届く範囲で集めたいと思っています。

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東京国立近代美術館(竹橋)にて。

新たな出会い~イスラエル博物館所蔵/印象派・光の系譜展

印象派は観る機会が多いから。。。と思ったのですが、上野の「ゴッホ展」の続きで行きました。
この美術展、すっごくよかったんですよ!
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大半の作品が日本初公開とかで、初めて知る画家も。中でもドイツのレッサー・ユリィは衝撃でした。《夜のポツダム広場》《冬のベルリン》と都市を描いた作品がモダンで、冷えた情感にグッと心をつかまれました。

ライトに照らし出された雨の街路が印象的な《夜のポツダム広場》は、1920年代半ばの作品。当時のベルリンは金融の中心地の1つだったそうですが、華やかさとは裏腹の社会の歪みや虚無的な空気を感じます。


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この作品風《風景》は撮影可でしたが、黒の艶、絵の具の質感はやはり写せない。。。力強いのとは違う、現実かどうかも分からないけれど、存在の塊が迫ってくるようです。


ゴッホは3点。赤色が鮮やかな《麦畑のポピー》と眩しい黄色の《プロヴァンスの収穫期》を並んで観られたのが嬉しい✨f:id:gina-sky:20211109000113j:plain

 

ポール・ゴーガンがタヒチを描いた《炎の踊り》も、素晴らしかった!官能的なために公的には禁じられていたそうですが、近代文明から遠く離れて霊的な世界とともに生きる人々の祈りが伝わってきました。

印象派が作品を生み出したのは、世界が近代化し、科学技術が進歩し、そして大きな戦争に向かっていった時代。この展覧会ではそうした背景も浮かんできて、”美しい”だけではない感覚が残っています。

*東京・三菱1号館美術館、2021年10月15日~1月16日。

世界報道写真展2021

世界報道写真展2021 (東京都写真美術館)へ。

毎年観ていますが、差別も紛争も一括りの言葉にできない個々の重さが迫ってきます。

今回はやはりコロナ禍で一変した世界は、どのように捉えられたのかに関心がありました。

大賞は、介護施設で、看護師さんがコロナ感染予防のハグカーテン越しに高齢の女性を抱きしめた<初めての抱擁>。

家族との面会が難しい中で心を通わせるお2人の姿には、私の亡き母のことも思い起こされ、身につまされました。

 

スポーツ部門では、コロナ禍で練習場が閉鎖したボルタリングの選手が、丸太を山のように積み上げ、切り株に手足をかけながら登るカットが。

只今、東京オリンピッックの最中ですが、世界のアスリートたちも思うようにトレーニングができず、想像を超える大変さなのでしょう。

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舞台「時子さんのトキ」感想2〜パンフレットから

舞台「時子さんのトキ」のパンフレットは全体が1つのフォトストーリーのようで、見入っていると舞台とは少し違った印象。作品を舞台と写真の両方から味わえました。

舞台は時子さんのモノローグで展開され、時子さん以外の登場人物は白い衣装をまとい冷たい印象だったのですが、それは時子さんの感じ方だった。。。

パンフの中で映し出された電信柱がたくさん立つあの街には、きっと別の世界があったのでしょう。

 次からネタバレします。

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パンフレットのキャスト写真は登場人物に扮していますが、衣装や表情にリアリティがあり、8年にわたる現実を生きていると思いました。

🔶時子さんと翔真くんのエピローグ

パンフの後半に見開きページに、2人が街の中で別れたと思われるカットがあります。舞台では翔真が土下座したのが別れだったので、やりきれなさが残りましたが、パンフの写真にホッとしました。静かな風の音が聞こえるような、印象的なエピローグです。

左ページに時子さん、右ページに翔真くん。各ページは上下に2カットが並びます。上段の時子さんは不安げな表情。翔真を見送っているのですね。“幸せだからいいと思っていた”のに、なぜこんな結果に・・・という気持ちでしょうか。そして下段の写真はくるっと踵を返した後ろ姿です。腕を後に組み、ちょっと電信柱を見上げ、8年間は終わったと。

一方の翔真は上段で振り向いてわずかに微笑み、下段は後ろ姿で路を歩いていくーー照れくさいのか頭に片手をあてて。。彼は夢に区切りをつけ、まだ頼りないながらも前に踏み出せたのでしょう。

舞台になかったこのエピローグが、私はとても好きですね。人が気配のする街の中で別れたなら、新しい温もりをつかめる気がするので。

 

パンフレットと舞台を比べながら、もう少しそれぞれの物語を想像してみます。

🔶時子さん(高橋由美子

演目のタイトルが「時子さん・・・」なので、つい敬称で呼んでしまいます。

息子の年齢から、時子さんは30代半ばから40代。舞台では自分のことを「おばさん」と言い、人前では元気そうな女性でした。ただ、これは時子さん自身が捉えた自分の姿です。

パンフの写真では一転。スリップドレスで翔真に寄り添い、おばさんでもママでもない女を感じさせる人でした。翔真と出会う前の神経質そうで孤独な姿、出会って満たされた頃のやわらかい表情、そして別れの時の諦めが痛々しく伝わります。

時子さんはもともと自己評価の低い人だったのでしょう。その原因はわかりませんが、周囲の評価に影響されすぎ、すぐ「私が悪い」と謝って逃げてしまう。離婚後に就いた仕事もスーパーのパート→パチンコ店→スナックの店員と、一人で安定的に生活していくには心もとない。最後に息子との関係が修復できますが、今度は息子に依存しそう。コロナでスナックの経営も危うく、これからどうやって生きていくのだろうと心配になります。

でも自分では辛い、寂しいと思いつつ、実際には周囲に心配してもらえるところが、この人の逞しいところかもしれません。

 🔶翔真(鈴木拡樹)

パンフの写真は演じる鈴木拡樹さんの色が濃いためか、全くクズには見えません。

翔真の年齢は20代前半からちょうど30歳くらい。今の人たちならやっと世の中に出て大きく成長する年代ですね。人として未熟なのは仕方ないでしょう。

 写真の翔真はアーチストの面構えをしていて、本当に音楽に向き合っていたと思えました。時子さんは翔真の売れるかどうかではなく、彼の音楽そのものを素直に好きでいられればよかったのにね。

舞台で翔真が時子さんにキスしようとする場面がありますが、時子さんに対して何がしてあげたかったのかな、という気がしました。翔真から見た時子さんは、母親の代わりではけっしてなく、パンフのように繊細で妖艶な女性だったのかもしれません。

🔶NPOの柏木(矢部太郎

舞台ではお節介きわまりない人。でもパンフの写真は哀しそうにどこかを観ています。この人こそ、虚無的な匂いがします。本当は「契約のような決まりごとはどうでもいい」と感じているから、その「どうでもいいこと」に人生の時間を使うタイプに見えましたけど。

🔶スナックのママ・スーパーの先輩

舞台で演じた伊藤さんの声がとても可愛らしかったので、ちょっとイメージが混乱しますが、まあ誰にでもある程度の黒い部分を持った人かな。この人の写真は、世の中が変わることに少し怯えているように見えます。「ソーシャル、ソーシャル」のセリフが耳に残りました。

🔶時子さんの元夫(山口森広)

山口さんは1人で4役演じられているので、パンフの写真はキャクターを特定しにくいですが。。。ガッツのある働き盛りのイメージですね。とはいっても、元夫はマザコンなのでしょう。舞台の終盤で時子さんに「翔真ではなく息子のことを考えろ!」と怒った時、かつては自分が甘えたかったのだろうなと、ゾッとしました。

妻に甘えたいばかりで、妻を受け止めることはできなかった。そしてDVに走って離婚。この夫婦は、もうちょっと何とかならなかったのかしら。

🔶小夏(豊原江理佳)

パンフの江理佳さんはすごく清楚で美人!!舞台の小夏ちゃんは、オラオラとまくしたててましたが。小夏は夫も子供も翔真も、みんな好きですよね。パワフル、愛情のかたまり。でも一緒に全部は手にできないので、いらいらしていたのかも。

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こうしてみると、登場人物一人ひとりの人生はなにかと興味深いです。

舞台が終わってから2か月近く経つのに、まだ引きずっている感情があり、書き留めなければ私自身が次に進めないような気がしていました。この冬もコロナ禍のダメージが続きそうですが、ディスクが発売されたら、もう少し冷静に観たいと思っています。